酒井和彦の森の学校 2021夏
フィンランド 極夜の北方林
フィンランドの森林科学科の学生は、木の名前は3つ憶えればいいそうです。白樺とエゾマツ(スプルース)と赤松(スコテッシュパイン)です。
この絵は1993年に同行した札幌の画家が、夜中でも沈まない太陽の下で書いてくれた北極圏(KEMI市北緯65度)の
白夜の森林限界です。北海道も北方林ですから雰囲気はそっくりです。
平地林でササがないので、林業の機械化が進み他の欧州諸国からフィンランドは成長量以上に木材を生産している
と揶揄されていますが、森林率は74%と世界一です。
林業機械は下請けと呼ばれる個人持ちで、キャビンの周りに電気をつけて一日3交代稼働させ、木材の売買もキャビン内からデータ通信で行われます。年に数回森林官が来てデータの精度をチェックするそうです。
フィンランドは平地林で木が細く、北海道のようなササが無くて、数多い湖と相まって美しい森となっています。
森林保護の話になると、車両系林業機械のタイヤの接地圧が話題の中心でした。北海道のようなクローラ(履帯)は使われていません。
フィンランドの森林法の特徴は、他人の森でも自由に入りコケモモなども自由に採取したり出来ることです。タモギダケに似た黄色いキノコがあり味はいいけど硬かった記憶です。
1月に北緯63度の製造工場に行きましたが、先の日本画の白夜の頃と逆で日中でもうす暗い極夜の季節で、同行の仲間が会議中に頭痛で倒れてしまいました。
さすが福祉の国フィンランドです。日本語通訳付きの救急車が来て、ヘルシンキの病院まで極夜の森の中を無料で搬送してくれました。同行の私は日本食堂から寿司を運び一発で回復させることが出来ました。
冬のフィンランドは自殺者が多いので、老人は国費で時々ホテルに泊らせます。私も半日ビンゴゲームに参加したことがありますが、羨ましい限りです。
フィンランドは湖も多く、中央にあるタンペレ湖で童話「木の音を聞く」は生まれました。父を亡くした女の子の話ですが、日本語訳があり、親子森林教室で子供たちに朗読してもらっています。
この写真は、日本担当のヘイノネン氏が来日しハトバスに乗って一緒に見た東京の皇居外苑の松の木です。
「どうすればこのように曲がって美しい松の木ができるのか?」の質問が30年も経った今でも頭から離れません。
フィンランドは潮の満ち干がないが、日本は月の引力が強くて木も曲がる説を私は信じたい。亜熱帯の中米ホンジュラスでは、「月が欠けたら種を蒔け」の説がありますが私はこれも信じたい。
これからオーロラやムーミンやサンタクロースに会いにフィンランドに行く人は、サウナ風呂と強いお酒(アクアビット)と社交ダンスが必須科目であることを申し添えます。隣のスエーデン人と違って、性格が日本人に似ていて付き合いやすいと思います。
(酒井)